お盆明け最初の勤務日である。
件の新人は別の班に異動になり、 久々の1人作業だ。今までは人員過多で、1台の作業台で2人で作業する羽目になっていた。これが2か月ほど続いていたので、自分のペースで好きなように作業できるという解放感は中々に素晴らしいものであった。
ところが、夕方頃どういう風の吹き回しなのやら、突然希死念慮に襲われた。世界の全てが途轍もない苦痛に見えて、これから逃れるためには自死しかない。自死しかないんだ!……などという、普段なら絶対にしないであろう思考に耽っていた。
そしてなんという事だろう。帰りのバスの車内で首を吊るためのロープを注文してしまったのである!いやはや全く恐ろしい。いざこの世からおさらばする際もこれぐらい潔くありたいものだと我ながら感心してしまう程だった。
因みにこのロープだが、返品はせずに手元に残しておこうと思う。いつでも手元にリセットボタン……じゃなかった、電源ボタンがあれば、逆に生きる気力が湧いてきそうな気がしてきたのだ。嫌になればいつでも強制終了ができる。その選択肢があるだけで人生随分生きやすいものになると思うのだが、読者諸兄はどう思うだろうか。現実世界でこんな話をしようものなら面倒な事態になりかねないが、ここなら全く気にせずできる。
思いを吐き出せる場所、人生の電源ボタン。この2つがあれば現代社会という荒波も楽々進めそうだと思った22歳の夏であった。